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諏訪部さんに嵌まっていますが、最近平川さんもハマリ気味。
演技が上手い人が好きみたいです。
男女問わず。
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本編が凄い事になってきたので、癒し代わりに(笑)
くじらって、世界のどこにいても…真裏に居たって仲間の声が分かるんだよね。
だから。
あの時から私はくじらみたいにあなたの声だけはどこに居たって分かると思うんだ。
くじら。 ~一聞き惚れ、しちゃいました~
出会いは、おばけ屋敷だった。
友達が面白がって行こうって話をしていて…仕方なく着いて行ったんだけど。
おばけは怖くない。
怖いのは、暗闇。
特に、真夜中の音の無い闇が嫌い。
だから、乗り気じゃなかった。
おばけ屋敷だし、それなりに照明はあると思っていたんだけど…入ってみたら無かった。
「ねえ、夕陽…大丈夫?」
「ゆーひっておばけ嫌いだったっけ?」
暗闇嫌いな事を知っている友達はおばけ屋敷に入ってすぐに心配して声をかけてくれた。
知らない友達はおばけが嫌いだと勘違いしてるみたいだけど、傍から見ればそうは変わらないだろうからあえて訂正しない事にした。
「うん…何とかね…」
とはいえ、思ったよりも照明が少なく、蓄光の塗料での道案内のみとは…正直、入り口で回れ右したい気分だった。
一緒に来ている友達は四人。
はぐれたりしなければ最後までいけるとは…思う。
そう、思っていた。
思いのほか怖めのおばけが出てくるなんて思ってもいなかったから、甘く考えていたのだ。
そして。
おばけの恐怖に耐え切れなかった友達が走り出して、私は一人残された。
どうしよう、おばけは怖くないんだけど…暗闇が怖い。
おばけのいないエリアなのか、音もしない。
他に人がいれば無音の恐怖なんて無いのに。
どうしよう…動けない…
ひとりじゃ、蓄光の明かりくらいじゃ耐えられない。
恐怖に足が竦んで、私はその場にしゃがみこんでいた。
時間的に人がいないのか、入場制限をしているのか分からなかったけど、私以外にはお客がいないようだった。
ああ、マリ戻ってこないだろうか…助けに来ないかな。
しゃがみこんで動けないでいる私の肩に、ぽんと人の手が置かれた瞬間、友達が来たんだと思った。
「マリ?来てくれたの?」
でもそれはすぐに違うと分かった。
友達が走っていったのは前の方向。
後ろから来るはずが無い。
「ごめんね、ここのアルバイトなんだ。立てる?出口まで着いて行くよ」
「いえ…立てるんですけど、動けないんです…怖くて」
「じゃあ、手を引いてあげるから目を瞑ってまま着いてきて」
「……あ、はい…」
アルバイトのお兄さんの声に反応していて、返事をするのが遅れてしまった。
勘違いしてるみたいだけど、出口まで連れて行ってもらえるならありがたい。
このままではとてもではないけど、たどり着けない。
それにしても…暗闇の恐怖を一瞬忘れるくらいのいい声のお兄さんだな…。
お兄さんの言うとおりに目を瞑って着いて行ってるんだけど、考えるのはそればかり。
低いけど良い声。
音域で言うならバリトンくらいかな?
「はい、着いたよ。目を開けたら目の前が出口だからね」
「ありがとうございました」
「どういたしまして」
目を開けるとそこには光が漏れている出口の扉があった。
振り向くと、そこには人の姿は無く…お兄さんはすでに戻ってしまった後だった。
「どんな人だったんだろう…?」
そんな事を思いながら出口の外へ出ると、先に出ていた友達に囲まれて謝罪の言葉を浴びせられた。
ごめんねと泣きながら言う友達に大丈夫だよと返事をしながら、私が考えていたのは声のこと。
今まで感じた事の無い感覚。
声だけで気になる…これって…
その日から、私はそのお兄さんの声を忘れることなく日々を過ごす事になった。
次の日おばけ屋敷に行ってみたら、お兄さんはバイト期間が終了していていなかった。
顔も知らない、声だけの存在。
声だけで惚れちゃうなんてあんまり聞かないけど…
あっても、いいと思うのだ。
つづく